企画展終了
開催日:2023年2月4日(土)~5月7日(日) ※会期延長しました
趙根在写真展 地底の闇、地上の光 ― 炭鉱、朝鮮人、ハンセン病 ―
趙根在(チョウ・グンジェ、日本名は村井金一/1933~1997年)は、1960年代から1980年代にかけて、国内各地のハンセン病療養所を訪ね、隔離政策によって収容された入所者、とりわけ在日朝鮮人に焦点を当てながら、病や民族の複層的な差別のなかで生き続ける人間存在に迫る写真を撮り続けました。
愛知県知多郡大府町(現大府市)に生まれた趙は、家庭の事情で中学3年生のときに亜炭鉱山で炭鉱夫として働きはじめます。地底の闇のなかで危険と隣り合わせの仕事をする日々は、地上の光への強い脱出願望へとつながっていきました。やがて在日朝鮮人の歌舞団の照明係となって全国公演に帯同し、旅の途中で熊本県の国立療養所菊池恵楓園を訪れたことを機に、ハンセン病に関心を寄せるようになります。
1961年の初夏、東京の国立療養所多磨全生園を訪ねて在日朝鮮人の入所者に出会いました。「人間同士として向きあえ語りあえる写真」を撮りたいと、以来約20年間、北は青森の松丘保養園から南は鹿児島の星塚敬愛園まで各地の療養所に足を運び、2万点におよぶ写真を撮影しました。感染、発症の可能性が低い病気であるにもかかわらず根強い差別の残る時代に、患者や回復者と分け隔てなく接する姿勢は深い信頼を寄せられ、その写真は類例のない生活記録となってあらわれました。
文芸運動の盛んな療養所において、詩人たちは出版物に趙の写真を掲載することを望みました。とりわけ、1981年に刊行された谺雄二との共作『ライは長い旅だから』は、社会的にも大きな反響を呼びました。
その仕事に注目した記録作家の上野英信は、筑豊の炭鉱写真集の編集にあたり、趙に参加を依頼しています。1984年から1986年にかけて全10巻が刊行された『写真万葉録・筑豊』には、上野とともに趙の名も監修に連ねています。
趙にとっては、差別のなかで生き続ける人たちの姿を記録することは、自分自身も含めた人間の存在の根源的な意味を獲得する行為であったのでしょう。本展では、国立ハンセン病資料館の協力を得て、趙根在の残した多様な仕事を、未公開写真を含めた209点の写真を紹介いたします。
助成:公益財団法人 全国税理士共栄会文化財団
協力:国立ハンセン病資料館
会場写真撮影:小原佐和子
■関連プログラム
オープニングトーク
西浦直子・吉國元(国立ハンセン病資料館)、岡村幸宣(原爆の図丸木美術館)
2023年2月5日(日)14:00~(参加費無料、要入館料)
オープニングトークの抄録はこちら
八重樫信之さん(写真家)トーク
「撮る人と撮られる人―趙根在さんと谺雄二さんの場合―」
2023年4月23日(日)14:00~(参加費無料、要入館料)
■関連書籍
展覧会カタログ「趙根在 地底の闇、地上の光 ―炭鉱、朝鮮人、ハンセン病―」
A5判モノクロ224頁 頒価1650円(税込) 出品作品210点収録
寄稿:阿部日奈子(詩人)、岡村幸宣(原爆の図丸木美術館)
趙根在「ハンセン病の同胞たち」(1985-86年『解放教育』10回連載)再録
「趙根在」図録は完売しました。
日本のいま撮る朝鮮人写真家/ハンセン病関連展示会が各地で
ハンセン病テーマにトークイベント/原爆の図丸木美術館で
―2023年2月12日 朝鮮新報
ハンセン病と向き合った写真家・趙根在 丸木美術館で企画展
—2023年3月6日 朝日新聞 埼玉版
地底の闇、地上の光 ― 趙根在写真展
—2023年3月8日 都築響一メールマガジン ROADSIDERS’ weekly
闇から光へ 趙根在、療養所の記録 <上> ハンセン病 生きた証し写す
—2023年4月7日 中國新聞
闇から光へ 趙根在、療養所の記録 <下> 炭鉱労働を経験、共感の写真 尊厳求める「同志」に向き合う
―2023年4月8日 中國新聞
趙根在 地底の闇、地上の光―炭鉱、朝鮮人、ハンセン病― 原爆の図 丸木美術館 東間嶺
―2023年4月8日 レビューとレポート 第45号
「趙 根在 写真展 地底の闇、地上の光―炭鉱、朝鮮人、 ハンセン病―」レポート。語り継ぐ写真、美しさとは何か 白坂由里
—2023年4月14日 TOKYO ART BEAT フォトレポート
ハンセン病と向き合う210点 暮らしや喜怒哀楽の生活記録 東松山・丸木美術館で趙根在写真展
—2023年4月23日 東京新聞 埼玉版
光る「尊厳」ハンセン病患者が生きた証し 趙根在写真展 埼玉県「原爆の図丸木美術館」で
―2023年5月1日 西日本新聞
カメラを持った思索者 「地底の闇、地上の光 炭鉱、朝鮮人、ハンセン病 趙根在写真展」について 土屋誠一
—2023年11月4日 レビューとレポート 第51号