企画展終了
開催日:2018年4月28日(土)~7月8日(日)
風間サチコ展 ディスリンピア2680
風間サチコは、徹底した独自のリサーチをもとに、主に木版画による漫画風のナンセンスな表現で、現在・未来につながる歴史の暗部を彫り起こすアーティストです。そのユーモアと鋭い社会批評眼を感じさせる作品は、近年、国内外で高く注目されています。
今回発表する新作《ディスリンピック2680》は、優生思想の歪(いびつ)さに着目した風間が、構想期間4年をかけて戦前からの関係資料を収集しリサーチを続け、優生思想の持つディストピア的な理想の国家のイメージを、今まで制作した作品で最大という縦2.4m、横6.4mの巨大な木版画で表現しました。1940年――皇紀2600年に制定された「国民優生法」、同じくその年に開催される予定だった幻の東京オリンピック。そしてその80年後に開催される2020年東京オリンピック。過去と未来の国家的イベントに思いを馳せながら、作品では架空の都市・ディスリンピアにて、近い未来に開催されるであろうオリンピック「ディスリンピック2680」の開幕式典が、虚実入り乱れたスタジアムを舞台に、皮肉とユーモアを交えて描かれます。健康至上主義の祝祭と人類淘汰の地獄を、鋭く木版に刻んだ新作にご期待ください。
また、ロサンゼルスオリンピックにおける馬術競技の金メダリストで、のちに硫黄島で戦死した悲劇のヒーロー西竹一と、近代オリンピックの象徴、近代五種のイメージが合体した機械化男爵「近代五種麿」を描いた《決闘!硫黄島(近代五種麿参上)》、精神論の先行した体育教育と軍隊を、アルミホイルを貼った襖に描き、鍛えれば勝利する(夢はかなう)という幻想を表現した《人間富嶽》も展示します。
協力:無人島プロダクション
風間 サチコ
1972年東京都生まれ。「現在」起きている現象の根源を「過去」に探り、「未来」に垂れこむ暗雲を予兆させる黒い木版画を中心に制作する。一つの画面に様々なモチーフが盛り込まれ構成された木版画は漫画風でナンセンス、黒一色のみの単色でありながら濃淡を駆使するなど多彩な表現を試み、彫刻刀によるシャープな描線によってきわどいテーマを巧みに表現する。風間は作品のなかで、現代社会や歴史の直視しがたい現実が、時には滑稽でコミカルに見えてしまう場面を捉えようとしている。そこには作家自身が社会の当事者であるよりも、むしろ観察者でありたいという意識が反映されている。作品はフィクションの世界だが、制作に際しては古書研究をするなど独自のリサーチを徹底し、現実や歴史の黒い闇を彫りおこすことで、真実から嘘を抉り出し、嘘から真実を描き出す。2016年、日本文化藝術財団「第8回 創造する伝統賞」受賞。近年の主な展覧会に「光州ビエンナーレ The Eighth Climate (What does art do?)」(2016年)、「府中市美術館公開制作69 風間サチコ『たゆまぬぼくら』」(2016年)、「ヨコハマトリエンナーレ 2017 島と星座とガラパゴス」(2017年)など。
風間サチコブログ 窓外の黒化粧
会期中のイベント
オープニングトーク
出演 風間サチコ 聞き手:岡村幸宣(原爆の図丸木美術館学芸員)
4月28日(土)午後2時15分 参加自由(入館料別途)
《ディスリンピック2680》をはじめ出品作について、制作者の風間サチコさんにお話を伺います。
特別対談「過去、そして未来 ―幻の東京オリンピックをめぐって」
出演 風間サチコ、安冨歩(東京大学東洋文化研究所教授)
6月9日(土)午後2時15分 参加自由(入館料別途)
『満洲 暴走―隠された構造』や『原発危機と「東大話法」』などの著書があり、「女性装の大学教授」としても知られる安冨歩さんをお招きし、オリンピックに象徴される「健全さ」がもたらす社会の生き難さについて、風間サチコさんとの対談を行います。