企画展終了
開催日:2016年3月5日(土)~4月9日(土)
特別展示 山内若菜展 牧場
福島の「牧場」の絵に思いを込めて
「私も声をあげよう、私は絵であげよう」原発地点から14kmの居住制限区域の福島の希望の牧場に行き吉沢さんの話を聞いた2013年の冬、そこから私は「牧場」を描き始めました。
「原発が見える場所で、原発をのろってのろって死んでやる」吉沢さんはお金にならない牛を生かし続け、東京に来て原発反対運動や国会前行動でも声をあげています。
でも誰もが原因に対し声をあげられる状況ではなく、飯館村の細川牧場の細川さんは事故後もずっと居住制限区域で牧場一本の生活をしています。馬が2012年から歩行困難の末バタバタ変死していくのを悲しみ、私が泊まった翌朝も若い馬が死んでしまって、私の事を待っていたかのように死んだ、と言ってくれました。
誰もが顔見知りで自然豊かな果実と飯館牛の村だった、その村をフレコンパックの山にした。陽気な細川さんを暗くした。この罪の重さ、闇の深さははかりしれません。たちこめる被曝の牧場で叫ぶ牧場主、ふんばる牛や馬、この「牧場」を、すべてに負けない思いを込めて描ききりたいです。
画家 山内若菜
ごあいさつ
私は2013年に福島の希望の牧場に行き、牛の殺処分を拒否し証拠の牛を生かす吉沢さんの思いを牧場で聞き、この絶望と希望が入り混じる牧場を描きたいと思いました。そして、聖書では神を「飼い主」と表現するそうで、神々しい光をはなつ牧場主この人を、描きたいと思いました。
馬の変死がおこっていた飯館村の細川牧場、細川さんに出会ったのもその年です。両牧場とも線量はとても高い、被曝の牧場でした。牧場主を描きたい!この牧場を大きく描きたい!でも放射能は見えない。臭いもない。その怖さをどう表現してよいものかと悩み、描いていく中からたどり着いたのは、可視化しようという事でした。見えないものの怖さを可視化しようと。しかし福島の動物たちの異常は、貴重な見えるものです。こもった汚染した空気を、生きた証拠の300頭の牛の群れや、その牛や馬にチェルノブイリと同じ症状、白斑症の牛に白い斑点を描き、膝の異常のあと立てなくなりあと変死していく馬を立たせようとする牧場主を、自分で見た、知った事を、牧場の小さい場面と大きいうねりを交錯させながらやっていきました。一頭の牛、群れの牛にも象徴されているのかもしれません。
これから私の希望の形が出てくるかもしれないと、まだ答えは出ていないのですが、そう絵が教えてくれたような気持ちでした。皆さんに、この牧場の絵を見ていただき、福島の牧場に訪れたようになってほしい。いろいろな見方で自分の牛を見つけたり、感じてほしいと思っています。そこに私自身の叫びを含めた命の叫びが響いていて欲しいと願っております。
丸木美術館の2階で、丸木位里氏、丸木俊氏の共作「原爆の図」と同じ場所で並べさせてもらえたこと、とてもうれしいです。
「原爆の図」は藤沢で描いたそうで、藤沢市に住む私のつながり、そして同じ反核の思いの流れで 私の「牧場」を、おこがましくも一緒に、ぜひみなさんに観ていただけたらと思っています。
山内 若菜
1977年 神奈川県藤沢市生まれ 1999年 武蔵野美大卒。
2007年 バングラデシュで個展、グループ展。
2009年からロシアでシベリア抑留の歴史を忘れない文化交流を開始。日露友好展、以後継続。
2011年から福島や岩手に行きフィールドワーク、福島の母や被爆の牧場を描いた展示を各地で開催。
2017年ロシア極東美術館で「牧場」巡回展を予定。
会期中のイベント
オープニング・レセプション
○日時:3月5日(土)午後2時より(「Post 3.11展」と共同)
参加自由(当日の入館券が必要です)
ギャラリートーク
○日時:3月12日(土)午後2時より(「Post 3.11展」と共同)
参加自由(当日の入館券が必要です)
特別講演
○日時:3月26日(土)午後2時より 講師:吉沢正巳(希望の牧場)
参加自由(当日の入館券が必要です)