企画展・イベントExhibition & Event

企画展終了

開催日:2014年12月20日(土)~2015年4月11日(土)

赤松俊子と南洋群島

パラオ島 1940年

1940年1月から半年間、当時日本統治下にあった「南洋群島」――現在のパラオ諸島やヤップ島を単身旅した28歳の赤松俊子(のちの丸木俊)。
ゴーギャンに憧れて南の島に向かった彼女は、当時、パラオに滞在していた彫刻家・民族学者の土方久功に出会い、大きな影響を受けながら、島の人びとの暮らしを見つめ、たくさんのスケッチや油絵を描き、ともに歌い、踊り、豊かな時間を過ごしました。

帰国後の彼女は個展を開催し、雑誌に挿絵や随筆を書き、絵本を刊行するなど、「南洋群島」のイメージを本土の人たちに親しみやすく伝え広げる役割を担います。
それは結果的に政府の「南進政策」を進めるプロパガンダの一翼を担い、1980年代に過去の戦争責任を追及される要因にもなりました。その一方で、文章や絵画などの表現から感じられる俊の視線は、植民地主義における差別的な人間観から逸脱し、当時の社会矛盾や普遍的な人間の在り方を見つめているようにも思われます。

この南洋体験は、彼女の人生に大きな影響をもたらしました。明るい陽ざしのもとで伸びやかな暮らしを営む島の人びとの姿に触れることで、豊かな色彩と裸体表現を獲得し、帰国後の作品では「日本画」と「洋画」という従来の枠組みを超えた実験を試み、後の夫婦共同制作《原爆の図》を予感させる表現を生み出します。
俊は再び島へ戻り、「無人島を買ってアトリエを建て、一人で絵を描いて生きる」ことを夢見ていましたが、程なく日米戦争がはじまり、「南洋群島」も最前線の戦場となって多くの人が犠牲になりました。また、俊も船で立ち寄ったテニアン島からは、広島・長崎に投下するための原爆を積んだ爆撃機が飛び立つという皮肉な運命のめぐりあわせも起こります。

今回の展示では、丸木美術館・丸木家が所蔵する26点の絵画、180点に及ぶスケッチや絵本原画などを全点展示し、あらためて1940年の「南洋群島」で、若き日の俊が何を見つめていたかを振り返ります。南洋の強烈な陽ざしから生まれる光と影のコントラストのような動乱の時代の現実をまっすぐに見つめた俊のまなざしを、ぜひ、多くの方に感じて頂きたいと思います。


アンガウル島へ向かう 1940年
ヤップ島 1940年

南洋スケッチ 1940年


会期中の催し物

特別トーク企画 「『南洋群島』とその後のマーシャル諸島」
○2015年2月22日(日)午後2時より
 ゲスト:テンポー・アルフレッド(アイルック自治体議員)、ロザニア・アルフレッド・ベネット(マーシャル諸島国会元職員)
 参加費500円(入館料別途)
 当日は市内循環バス運休のため、午後1時に東武東上線森林公園駅南口に丸木美術館の送迎車が出ます。※その他の交通手段:お車または森林公園駅南口からタクシー約10分、つきのわ駅南口から徒歩27分(駅窓口で地図がもらえます)。

 1914年から1945年にわたって日本が「南洋群島」として支配下においていたミクロネシア。第五福竜丸の被ばくで知られる米国の核実験が実施されたマーシャル諸島もそのひとつです。
 マーシャル諸島にとってのアジア太平洋戦争の終了は、日本統治からの「解放」ではありましたが、平和を約束するものではありませんでした。冷戦という新たな戦争の最前線に送り込まれ、67回に及ぶ米国の核実験の被害を受けました。
日本統治時代に生まれたテンポー・アルフレッドさんと、日本人の祖父をもつロザニア・ベネットさんをお迎えし、お二人の話を通して、朝鮮半島や中国などアジアだけではない、もうひとつの近隣地域であるミクロネシアに目を向け、日本との歴史的な深いかかわりを見つめなおします。(企画:竹峰誠一郎)

テンポー・アルフレッド Tempo Alfred
1954年水爆実験の時、マーシャル諸島アイルック環礁で被爆、当時13歳。地元小学校の元校長。退職後、現在までアイルック自治体議員を務める。

ロザニア・アルフレッド・ベネット Rosania A. Beneett
40代女性、テンポーの姪、母方に日本人の祖父をもち、アイルックの地域社会の一員として育つ。南太平洋大学で法律学を専攻し卒業、マーシャル諸島国会元職員で、首都マジュロに暮らす。

ギャラリートーク 「赤松俊子の旅した『南洋群島』」
○2015年3月28日(土)午後2時より
 出演:今泉裕美子(法政大学教員) 参加自由(当日の入館券が必要です)
 当日は東武東上線高坂駅西口12時7分発または東松山駅東口13時12分発市内循環バス唐子コースをご利用ください。
 ※その他の交通手段:お車または森林公園駅南口からタクシー約10分、つきのわ駅南口から徒歩27分(駅窓口で地図がもらえます)。

 赤松俊子の旅した「南洋群島」とはどのような場所だったのか?ミクロネシア研究者の今泉裕美子氏をお迎えして、パラオやヤップなど俊の訪れた島を中心に、日本とミクロネシアの歴史的関係についてお話しいただきます。


企画展・イベントトップへ