企画展終了
開催日:2014年11月20日(木)~12月13日(土)
今日の反核反戦展2014
冒されないアートを ――すべての核・あらゆる戦争にノーを――
戦争は何故起きるのかという問いに、論理的には答えを出すことが可能だが、では、戦争が起きないようにすることは可能か、という問題に応えるのは極めて難しい。だが、その一つの答えと言えるかどうか、わが国はあの大戦争での無残な敗北の結果、その痛切な教訓として、武力を放棄し二度と戦争をしないことを誓い、理想的な平和憲法を創った。けれどもその後、戦争は世界のあちこちで殆ど絶え間なく起きている。テロとの区別もつかないような戦争が……。
何故起きるのか、ここで強いて単純にその理由を考えてみると、先ず要因として、民族・宗教・制度・思想・信条・イデオロギーの相違、対立があり、その上に経済的利害損得のせめぎ合い、争いが憎しみを伴って加わる。それが個人の単位でなく集団や国家の間で起きるのがテロであり戦争なのだ。
経済は、人間の度し難い欲望と感情によって動き、政治は、その経済と不可分の一体である。戦争は政治の最終的形態である、とクラウゼヴィツは言っている、だとすれば、戦争の究極の原因は、国の経済・産業を担い動かしている当事者たちの「欲望」という名の心的エネルギーの蠢く場の中にあると言わなければならない。一口に欲望と言っても、食欲・性欲という生存本能を根底として、それに付随する物欲・金銭欲・権力欲・支配欲・名誉欲・その他分類するのも困難な、多岐にわたるさまざまな種類がある。それが単に、当事者の個人的な欲望としてではなく、それらが集合し絡み合い、政・官・財の集団的欲望すなわち政治の欲望=国家の欲望となって膨れ上がり、それが他の国の利害と衝突して暴力沙汰となる、それが戦争だ。
ところで「芸術」は本来そのような「政治」とは異なる位地にあるものだ。心と体、形而上と形而下の関係、というべきか。しかし、芸術家もまた「生活」という次元で政治と密接に関わらざるを得ない、だから芸術が政治と全く無縁であることは不可能なのだ。それかあらぬか陰に陽に、政治は作家の生活を通じて芸術に干渉する。芸術が政治に有害な作用を及ぼさないためでもあろう。もし、ひとたび非常事態(戦争)が発生すれば、表現の自由など容赦なく踏み躙られる。そのことは、かつての戦争が厭というほど証明してくれた。だからわたしたちは、そのような政治の身勝手を許してはならないのである。
しかるに、この国の政治家たちは、あの敗戦による得難い教訓として立派な平和憲法を作り上げたにもかかわらず、自らが守るべきその憲法を忽ち邪魔者扱いにしはじめた。それは、アメリカの帝国主義的世界戦略に乗せられたせいでもあるのだが、とにもかくにもこの国を昔の姿に近付けたいとする保守的政治の力学は、戦後絶え間なく復古に向けて作用し続けたのである。特に先の衆院選で自民党の安倍政権が返り咲いて以来、大勝した勢いに乗り、ここぞとばかり「戦後レジームからの脱却」と称して戦前的旧体制への回帰を急ぎ始めた。目指すは、念願の憲法改正(改悪)そして戦争のできる「強く美しい」国造りである。それで、「アベノミクス」とかいうあやかしの景気回復術を弄しながら「特別秘密保護法」をはじめ、矢継ぎ早に幾つもの悪法を成立させてしまった。国益のため、そして同盟国アメリカのためには、戦争も辞さない、という構えである。そのためには原発もまた廃止するわけにはいかないという。
このような危機的状況を前にして、わたしたち美術に携わる者は、政治と芸術の関係について深く思いを致さなければならない。その上で美術(芸術)の表現者は、おのれの仕事が、何者にも命じられたり指示されたりしたものではないこと、全く内発的欲求によるものであることを常に自覚していなければならないのである。
さもなければ、生活という名の内的現実に深く入り込んでいる政治という外的現実が、いつしか芸術を冒していることに気が付かず無頓着になるかも知れない。もし、その内発する欲求以外の様々な欲望がそこに(作品に)混じれば、それはその分だけ芸術の純粋性を失うことになるだろう。作品は汚れてしまう。権力、なかんずく国家権力は、常に理不尽かつ巧妙な手段を弄して自らの保身とその拡大のために国民を利用するのだ。芸術もまた利用される。だが、芸術は断じて権力に利用されてはならない。権威になびいてはならない。何ものにも冒されてはならないのだ。むしろ、でき得ればこちら側があちらを変えるくらいの力を見せたいものである。
2014年4月29日 今日の反核反戦展呼びかけ人 池田龍雄
出品作家
相澤秀人 相本みちる 青山穆 池田龍雄 池原浩子 石川雷太 稲垣三郎 井上活魂 植村佳菜子 潮田友子 圓城寺俊之 大津年雄雄 大橋範子 大平右太江 小畑和彦 小原一子 柿沼倫子 影山あつこ 金子清美 川崎三木男 姜泰成 木村裕 草薙静子 黒田オサム 小林政雄 近藤あき子 坂口寛敏 佐藤俊男 さのともみ 鷲見純子 清野光男 清野裕子 園阿莉 高橋輝雄 田口玲皇奈 田島和子 建畠朔弥 谷口僚 崔誠圭 出店久夫 富永剛総 中村安子 奈良幸琥 原健吾 ヒーロー伊藤 平松利昭 藤井龍徳 藤井冬紀 星野文昭 本多和夫 本多文代 マエノマサキ 前山忠 増田敏郎 万年山えつ子 三木祥子 村田訓吉 薬師寺波麻 山本文子 吉岡セイ
Artist Action A3BC 反戦・反核・版画コレクティブ スタジオ・ヴォイド(岩田恵、山村俊雄、阿部大輔) SYプロジェクト(石川雷太、今井尋也、万城目純、内田良子、多田美紀子)
会期中の催し物
オープニング・イベント
○11月22日(土)12時30分
参加自由(当日の入館券が必要です) 交流パーティ、パフォーマンス公演
当日は12時に東武東上線森林公園駅南口に送迎車が出ます。
【パフォーマンス演目】(順番は未定です)
■大橋範子『human possibility』
■『日本国憲法全文朗読会』 村田訓吉(歌と舞)、坂本美蘭(音楽・歌)、小森俊明(音楽)、坂田洋一(記録)
■SYプロジェクト『ゼロベクレルプロジェクト』 内田良子(朗読)、万城目純(ダンス)、清水友美(ダンス)、石川雷太(サウンド)
■ZEROVOID『Requiem for a Bad Dream』 圓城寺俊之+ナカガワユウジ(ノイズサウンドインスタレーション)
■奈良幸琥
■黒田オサム(ほいと芸)
■スタジオ・ヴォイド/岩田恵(筝)+阿部大輔(尺八)