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企画展・イベントExhibition & Event

企画展終了

開催日:2013年3月18日(火)~4月12日(土)

増田常徳展 明暗の旅から―闇の羅針盤―

闇の羅針盤 2011年

原爆の図丸木美術館は、丸木夫妻の「原爆の図」連作とともに、核に対峙する芸術を企画展で取り上げ続けています。
1945年8月の広島・長崎の原爆投下以後、人類と核の歴史は複雑な経緯をたどりながら今日にいたりました。核をとりあげた芸術表現も、時代とともに主題を変化させながら、とりわけ2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故以後は、可視化しにくい放射能汚染に向き合いながら、原発を含めたあらゆる核と人類は共生できないという問題意識を提示する作品があらわれるようになりました。

長崎・五島列島出身の画家・増田常徳は、切支丹の迫害や戦争の歴史を出発点に、原爆、ナチスドイツのユダヤ人虐殺、済州島事件など人間のもたらす不条理の深淵を見つめてきました。そして、福島原発事故後、いち早く核に内在される不条理を、絵画で問い続けてきた数少ない画家のひとりです。
「3.11」という体験を経て、私たちの生きる世界はどのように変わったのか。あるいは変わっていないのか。芸術が記憶を語り継ぎ、忘却の防波堤になるとするならば、増田の突きつける“闇の羅針盤”は、私たちにどのような未来を指し示すのでしょうか。


痙攣 2008年

「かつて人類は万物の霊長と自負し、比類なき美しきものを創造してきた。だが今は愚かしく悪知恵長けた最下等の動物になり果てた。人類の英知なぞ何処を探しても見当たらない。空を、海を、地上を汚染し、人間の心の中まで汚れてしまった」これは、長崎で被爆した永井博士の著書「この子を残して」の映画化に際し、木下恵介監督が語った言葉である。(「夏雲の丘」山下昭子著・長崎新聞社)

この暗澹たる彼岸の淵の叫びは、私の「美」に対する概念を大きく覆させるものとなった。従って「美とは」、視覚で捉えられる表層的なものを言うのではなく、混沌たる暗い闇の中に希求してやまない、人間の良心との葛藤によって、尊い真の美の域に到達することを可能にする。レンブラントの眼差しのように「自身を戒め、人間を凝視し」その愚かな振舞いを超越した輝きこそが、美の創造に他ならない。

これまでも、絶えることなく悲劇は繰り返され、忘却と化す結末に嘆いてきた。正に東日本大震災と原発事故はそのような理不尽な状況を露呈している。多くの犠牲のもと、慟哭に打ちひしがれながら、見えない脅威に脅え、様々な辛酸をなめている。このような苦悩と憤りは他人事ではなく、私達一人一人と繋がっている。この苦しみを共有し、過ちを悔い改め、混沌たる暗い闇の向こうにこそ「美を求め」、突き進むことに価値があり、希望も生まれることを私は疑わない。暗ければ暗いほど、光を求め、また辛く苦しければ苦しいほど希望を求めるように、鎮魂を込め表現される地の底の叫びが、真実の読経となって、喚起され響いていくことを願う。

(画家 増田常徳)

圧殺 2008年

会期中の催し物

「闇の羅針盤」オープニングイベント 詩と音楽を詠い、奏でる―トロッタの会―
○3月22日(土) 午後2時 詳しくは、以下のHPをご覧ください
 http://www.kibegraphy.com/jotokutorotta.html
 予約・前売り2,000円 当日2,500円(美術館入館料込)
 ※当日は、午後1時に東武東上線森林公園駅南口に丸木美術館の送迎車が出ます。

増田常徳展トーク「ヒロシマ・ナガサキ、そしてフクシマ―3.11以後の社会と美術」
○3月23日(日) 午後1時 出演:増田常徳、徐京植(東京経済大学)、武居利史(府中市美術館)
 ※参加自由(当日の入館券が必要です)


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