企画展終了
開催日:2011年12月23日(土)~2012年2月4日(土)
丸木スマ 生命のよろこびを見つめて
丸木スマは1875年に広島県安佐郡伴村(現広島市安佐南区沼田町伴)に生まれました。
幼い頃より野山を駆けまわり、伸びやかに成長した彼女は、20歳で飯室村(現広島市安佐北区飯室)の丸木金助と結婚し、 3男1女を生み育てます。
家業の船宿業や家事のほか、畑を耕し、蚕を育てるなど目まぐるしく働きますが、やがて家業は衰退。
土地も家財も手放して広島市内の三滝町に転居し、そこで原爆を体験します。
彼女は命をとりとめたものの、夫の金助は翌年春に亡くなりました。
その後、スマは長男の位里と俊の夫妻に勧められ、絵を描きはじめます。
そして70歳を過ぎて初めて筆を執ったにもかかわらず、誰もが驚く天真爛漫な自然讃歌の作品を次々と生み出し、 女流画家協会展や院展にも入選を重ねて一躍注目を集めるようになりました。
1956年に81歳で死去するまで、彼女の残した絵は実に700点を超えています。
丸木美術館では、位里・俊の描いた《原爆の図》連作とともに、スマの絵も紹介し続けてきました。
まれに見る大災害や原発事故の続いた年の締めくくりにスマの展覧会を開催するのも、多くの人が傷つき、苦しんだ今こそ、スマの見つめた生命のよろこびを観ていただきたいという思いからです。
スマの作品世界について、作家の水上勉は「誇張でなく哲学的で、一見童画風ながら、まったくちがう。
人生の苦惨を経た人の、無心な絵に心をうばわれた」と書いています。大きな悲しみを経たからこそ、見えてくる世界がある。どんな状況でも、希望を見失ってはならない。
スマの絵から見出せるユーモアやよろこびが、来る2012年に向けて、人びとの励みになることを願ってやみません。