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企画展終了

開催日:2016年1月30日(土)~2月27日(土)

私戦と風景 Private war and Landscapes

開催概要
名称:私戦と風景 Private war and Landscapes
日程:2016年1月30日~2016年2月27日
アーティスト:角田啓、手塚太加丸、亜鶴、鈴木操、市川太郎
ゲスト・アーティスト:釣崎清隆
キュレーター:齋藤桂太


告知文
民族主義の高まりや所得格差の増大、資本主義の限界は、世界に私たちの想像を超える変化を引き起こします。日本でも歪なナショナリズムの噴出が懸念され、しかし一方で、所属する共同体の風景を考えざるをえない時期にあるでしょう。
パトリオティズムなき共同体は不幸ですが、その不幸が安易なナショナリズムへと転化すれば、それは悲劇的です。いまこそ私たちは、この変わりゆく風景から、様々なことを想像し、判断し、実行し、よりよい世界を創造する必要があります。アーティストは常に私たちが思いもよらなかった風景と遭遇し、それを私たちに鑑賞させるべく創造を行っています。
今回、丸木美術館では、日本各地から集う5人の若手アーティストと、世界各地で死と向き合う1人のゲスト・アーティストが展示を行います。彼ら一人一人が日々、遭遇している「風景」と、そこから想像し展開された「私戦」から、創造された作品による展示をご覧ください。


概要文
私が私戦と風景という展示を開催するとき、その企図は概ね以下の一文に集約できる。「アーティストの創造に対する周到さはステート・テロル・レジスタンスによる想像を凌駕する」
2014年、中東の過激派組織ISILに参加しようとした北海道大学の生徒を警視庁が事情聴取した。 容疑は「私戦予備および陰謀罪」であった。刑法93条「私戦予備および陰謀罪」は1880年に旧刑法で制定され1907年に現行法へと改正された。1907年の当時から「国内で私人が外国と戦争するのは想像できない」と議論になったそうである。
2015年は私人にとって喧しい年であった。新国立競技場、五輪エンブレム、安全保障関連法案。そのどれもが反対運動を行う「私人たち」と共にいかにも白々しい民主主義の旗印とされた。いうまでもなく民主主義とはコンセプトである。
それらは我々が国家という組織を統治する上で必要に迫られて創造した一つの権力の形に過ぎない。
そして11月13日、パリ同時多発テロによりステート・テロル・レジスタンスはそのフィクションとしての周到さを問われざるを得ない状況へと突入した。 このような時代にアーティストに求められることは、その創造に対する周到さによって ステート・テロル・レジスタンスを遥かに凌駕するフィクションを爆発させることである。
2016年、私たちは社会に存在する様々な想像に敗北したり厭世することはない。 私たちは私たちの創造が社会に存在する様々な想像力を凌駕しうると示さなければならない。それは安保法制に対するレジスタンスや運動の持つ想像力、また、それらの主張する創造とは全く違う。私たちが私戦という時、まさに私たちは「想像できない」と言わしめる何かを創造しようとする。
今回の展示は5人の20代のアーティストと、1人のゲスト・アーティストによって構成されている。 人が集団でいるということはフィクションだ。だから、この展示には私戦と風景というタイトルが存在 する。しかし、まずは一人一人の作品を見て欲しい。それらは彼らが現実を凌駕すべく行った創造の産物である。作品はまず私人的なものとして想像され、しかし、私人という枠組みを凌駕すべく創造される。
アーティストが作品を発表するということの本来的な意義とは、そういった凌駕のための方法に他ならない。作品とは既存のステート・テロル・レジスタンスといった社会的な枠組みでは不可能な想像力を提示するためにある。そして、それこそ、このようなフィクションとしての周到さを問われる時代に参照されるべきものである。だから私たちは、アーティストの創造した作品から様々な周到さを学び、想像し、社会へと持ち帰る。
各論は各論である限り些末な問題である。それらは常に社会という枠組みの中で提起され続けるゲーム的な問題系に他ならない。あるいは現世の利益や自身の救済、動物的な営みや社会への還元を目指しているに過ぎない。いま必要なのは、そのような愚かさを離れ、それとは別の区画で創造を行うことだ。
アーティストは、自分が目の前に見据えた、戦うべき相手とのみ、じっくりと対峙する。目を逸らさず、自分の目の前に存在している、もしかしたら世界中でたった一人、自分にとってしか重大な敵ではないかもしれないものに対して、ただ黙々と格闘を続ける。
そして我々は、全くもって現実の社会から抜け出し、あるいは現実の世界を諦める訳ではない。 我々の目的は、我々の作品の鑑賞者が、社会に存在する風景を経由して、全く予想しなかった角度から、社会の枠組みを揺るがすことである。それは既存の法則とは全く異なった論理体系から、鮮やかに現実世界へと介入する可能性を探索するということだ。 私戦と風景は、そのような鋭利な作品を携え、風景から現実世界へと飛び込むような展示として行われる。
5人のアーティスト、亜鶴・市川太郎・鈴木操・角田啓・手塚太加丸。 1人のゲスト・アーティスト、釣崎清隆。それぞれの作品に、ご期待ください。

2015年11月15日 齋藤桂太


●参加アーティスト
亜鶴(あず)
1991年、兵庫県生まれ、2012年、大阪美術専門学校絵画専攻卒業。人間関係への違和感テーマに制作を行っている。主にSNSなどのメディアを介した己の承認欲求が根底にある人間関係と、Face to faceで交わされる、他者を承認する事で生まれる関係性には大きな相違がある様に思えるのだ。実在しない人間のポートレイトを描くことにより、メディア越しの人間性の不確かさを露わにし、それと同時に、文字通り作品とFace to faceの形を取る事の出来る鑑賞者は、自己の存在に深く思慮を 巡らし得る。 昨今、人としての生き方は多様化している。 私がアートを通じて行わなければならない事は、個人として思考させ、そして承認する事である。 主な個展に『Human-made noise(Gallery Den mym/京都/2015)』、 『今日の日の再構築(Spectrum Gallery/大阪/2015)』『Détente(2kw58 Gallery/大阪/2014)』など。

市川 太郎(いちかわ たろう)
作家、演出家。東京出身、京都在住。 大学時から舞台に関わり、2011年自身の演劇ユニット、”デ”を立ち上げる。 劇場にこだわらず俳優を用いたギャラリーでの展示なども発表。言葉のもたらす空間・人間への微妙な変化に着目した作品が特徴。主な作品にアトリエ劇研オルタナアートセレクション選出作『どこか、いつか、だれか』、6時間に及ぶインスタレーション『ルーペ/側面的思考法の発見』、アトリエ劇研演劇祭参加作品『もう、これからは何も』など。

鈴木 操(すずき そう)
1986年生まれ。文化服装学院卒業。 日本の伝統的な建築材である漆喰を方法として、物・言葉・時間をテーマに制作している。漆喰の原料である石灰は、今では主にモルタルやコンクリートなどの原料として、時代と呼応しながら 都市を形作っている。山から都市へと運ばれる石灰は、酸素のように社会を巡り、あらゆる機能を果たす。しかし、先史から存在する石灰は、言ってしまえば人間とは無関係に存在する。人間と物のあり方を見つめる方法として、漆喰は様々なヴィジョンを見せてくれる。主な個展に『スクいのlAST rESORT(XYZ Collective/東京/2014)』、『記憶喪失の石灰 – Amnesia Lime – (TAV GALLERY/東京/2015)』など。

角田 啓(つのだ けい)
イナタウツボ。1989年東京都生まれ。2010年、早稲田大学建築学科中退。2011年、画家の内海信彦氏による美学校の「絵画表現研究室」を卒業。絵画平面で構築された自立した立体物を主なモチーフにしている。今回のテーマは「どこを目指して戦っているのか?」という自分の到達地点に向けての風景を視覚化すること。主な個展に『YabernModern -波音-(ナオ ナカムラ/高円寺/2015)』、『破水、沸騰。(GalleryK/神保町/2010)』、『角田啓個展(GalleryK/神保町2009)』、また、舞踏公演『肉舞-shishimai-(テルプシコール/中野/2012)』の企画・美術など。

手塚 太加丸(てづか たかまる)
1990年屋久島生まれ。2013年沖縄県立芸術大学卒業。主な活動:故郷である屋久島の白川山に、かえり続けるプロジェクト「しらこがえり」を1013年より始動。以降毎年しらこがえりし、関連の展覧会や上映会などを行う。2014年には沖縄で共同制作空間「BARRACK」を立ち上げ、企画・運営を行う。現在屋久島と沖縄の2つの場所を行き来しながら活動を展開している。主な個展に『乱反射(lit/岡山・宇野/2013)』、『しらこがえりがえり(space de uehara/那 覇/2013)』、 『しらこがえりとそれら(BARRACK/那覇/2015)』など。

●ゲスト・アーティスト
釣崎 清隆(つりさき きよたか)
1966年富山県生まれ。慶応義塾大学文学部卒。高校時代に自主映画制作をはじめ、大学卒業後、AV監督を経て1994年からは写真家としても活動。ヒトの死体を被写体にタイ、コロンビア、ロシア、パレスチナ等、世界中の無法地帯、紛争地域を取材。1995年には池尻大橋NGギャラリーで初個展。 一方、映像作品として1999年、コロンビアで制作に3年を費やした残酷ドキュメンタリー映画『死化粧師オロスコ』を完成、2000年に公開。2001年モントリオール映画祭、シネマ・オブ・トゥモローに選出される。2006年、フランスIMHO/DWW社からアンソロジーとなる写真集2冊『REVELATIONS』、『REQUIEM DE MORGUE』が出版された。 2007年、2本目となるドキュメンタリー映画『ジャンクフィルム/釣崎清隆残酷短編集』を発表。 第34回ロッテルダム国際映画祭、タイム&タイド部門に選出。

●キュレーター
齋藤 桂太
(さいとう けいた)
1987年、東京都生まれ。高卒。アーティスト、キュレーター、株式会社渋家取締役。2008年、現代美術作品として家を借りるプロジェクト「渋家」を制作。 その後、渋家名義にて『渋家トリエンナーレ(渋家/東京/2010)』、『House 100(The Container/代官 山/2012)』、『After Nuclear Family(TRANS ARTS TOKYO/神田/2012)』、『Owner Change(Art Fair Tokyo/ 東京国際フォーラム/2013)』などを行う。2011年、劇作家・岸井大輔と出会い『東京の条件』に参加。戯曲集『戯曲|東京の条件(東京文化発信 プロジェクト/2013)』を編集。 2013年、『六本木クロッシング(森美術館)』、『ニッポンのジレンマ-新TOKYO論-(NHK)』などにアー ティストとして出演。2014年、演出家・篠田千明に誘われ演劇活動を開始。『機劇 ~「記述」されたものから出来事をおこす~(森下スタジオ/2014)』出演、『非劇(吉祥寺シアター/2015)』作。 また、1990年生まれ前後の批評家を集めた冊子「アーギュメンツ」の企画・編集を行っている。


会期中のイベント

オープニング・レセプション
○1月30日(土) 午前10時~午後4時
 レセプション中、正午より午後3時まで展示作家・市川太郎が構成するインスタレーション空間でのパフォーマンス、および午前10時より午後4時までフード・コーディネーター岡村飛龍によるフードクリエイションが行われます。参加費:無料。

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