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企画展終了

開催日:2012年9月8日(土)~10月13日(土)

発掘:戦時下に描かれた絵画

作者不詳 《弾痕光華門外》 1937年頃


昨年、作者不詳の油彩画《弾痕光華門外》が修復・発表され、新聞紙上でも取り上げられました。1937年の南京陥落直後に日本人画家によって描かれたと思われる作品は、従来の「戦争記録画」の勇壮なイメージとは異なり、生々しい銃弾の痕をとどめる門壁や寂しげに町を行きかう人びとの姿が印象的な、もの悲しい雰囲気の風景画です。
 「戦争記録画」といえば、敗戦後、連合国軍によって接収された後、無期限貸与というかたちで米国から東京国立近代美術館に返還された153点の作品が知られています。国民の戦意高揚の目的のために利用されたこれらの絵画群は、返還後も一度も全面公開されたことはなく、戦争責任をめぐる問題、絵画としての評価も未整理のままとなっています。しかし、戦時下に描かれた絵画は、もちろん、153点だけではなかったわけで、未公開のまま埋もれている作品も数多く存在します。そのイメージは必ずしも一律ではなく、それぞれの作者の意識を反映するように多様なものです。
 今展では、そうした“知られざる”戦時下の絵画を修復し、後世に残すことを目的に調査・研究を継続的に行っている株式会社ディヴォートの協力を得て、近年発見され話題を呼んだ長谷川春子の《少婦國防》や《弾痕光華門外》など住友資料館所蔵の油彩画4点と、精緻な写実描写の作品によって国内外で活躍した画家・吉田博(1876-1950)が中国大陸に従軍して描いた《急降下爆撃》などの油彩画3点や水彩画・素描群29点、写真1点の未発表資料(遺族蔵)を公開いたします。
 絵画は時代の空気を映します。加害と被害の交錯する戦争という複雑な時代に生まれたこれらの作品を、まずは直視すること。そこから、私たちの想像力は広がっていくのではないかと思います。

長谷川春子 《少婦国防》 1943年

吉田博 《鎔鉱炉》 1944年頃

会期中の催し物

トークセッション「戦時下に描かれた絵画」を読む
○9月22日(土/祝)午後2時
 出演:小勝禮子(栃木県立美術館)、北原恵(大阪大学)、佐々木泰造(毎日新聞)、尾形純(修復家)
 参加自由(当日の入館券が必要です)
 当日は、午後1時に東武東上線森林公園駅南口に美術館の送迎車が出ます。

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