企画展終了
開催日:2023年7月8日(土)~9月24日(日)
冨安 由真 影にのぞむ Yuma Tomiyasu In Presence of Shadows
私の母方の祖父母は、広島原爆の爆心地から1.5kmのところで被爆しました。祖母は生前、一度だけ私にその体験を話してくれたことがあります。皮膚が剥がれ落ちた腕を、幽霊のように前に掲げながらぞろぞろと歩く人々。助けてくれと言われたけど、どうしようもなくて助けられず、自身も死に物狂いで逃げたこと。祖母は、泣きながらその時の話をしてくれ、その内容の悲惨さ、凄惨さに、強い衝撃を受けたのをよく覚えています。
祖母の人生に思いを巡らせる時、広島原爆は私にとっては切り離せないものでした。自分が被爆3世であることから、いつか広島原爆に向き合った作品を作りたいとずっと胸に秘めていましたが、今回光栄なことにその機会を得ることが出来ました。原爆は今後も向き合っていきたいテーマではありますが、今最良だと思える形で発表したいと考えています。
制作は、実際に被爆者の方にお会いし、お話を伺うところから始めました。私の制作スタイルの中では珍しくリサーチベースで行いながらも、より普遍的な表現を模索したいと考えています。被爆者の方々は既にご高齢で、その体験を直に後世に伝えられる場が減ってきていることに強い危機感を感じます。一方で、私はその思いを、語られる「言葉」という形だけでなく、違う形で伝える力が芸術にはあるとも信じています。
2023年は第二次世界大戦が終わって78年目の年となりますが、今なお世界では戦争が無くなりません。この作品が人間の悲しみや苦しみに今一度目を向け、平和への思いを強くするものになればと願います。
冨安由真
協賛:アクセンチュア芸術部 タグチアートコレクション
協力:株式会社アートフロントギャラリー
冨安 由真(とみやす・ゆま)
1983年広島県生まれ。2005年に渡英し、ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ、ファインアート科にて学部と修士を学ぶ。2012年に帰国。2017年東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻修了、博士号取得。現実と非現実の狭間をモチーフに、見えないものや不確かな存在への知覚を鑑賞者に想起させる作品を、没入型のインスタレーションや絵画、立体など多様なメディアを横断しながら、数多く発表する。主な展覧会に「瀬戸内国際芸術祭2022」(豊島/2022)、個展「アペルト15 冨安由真 The Pale Horse」(金沢21世紀美術館/2021-22)、個展「漂泊する幻影」(KAAT 神奈川芸術劇場/2021)、個展「第12回 shiseido art egg:冨安由真展 くりかえしみるゆめ Obsessed With Dreams」(資生堂ギャラリー/2018)、個展「guest room 002 冨安由真:(不)在の部屋――隠れるものたちの気配」(北九州市立美術館/2018)など。主な受賞歴に第21回岡本太郎現代芸術賞 特別賞受賞(2018年)など。
会場写真撮影 加藤健
会期中のイベント
7月8日(土)午後2時 オープニングトーク
8月5日(土)午後2時 作家ギャラリートーク
8月19日(土)午後2時 作家ギャラリートーク
9月9日(土)午後2時 作家ギャラリートーク
9月24日(日)午後2時 作家ギャラリートーク
(いずれも参加自由、要入館料)
■関連書籍
展覧会記録集「冨安由真 影にのぞむ」
A4判カラー24頁 頒価1650円(税込)
撮影:加藤健
執筆:冨安由真、岡村幸宣(原爆の図丸木美術館)
通信販売をご希望の方は、下記の郵便振替口座に希望部数×1650円+送料(6冊までは430円)をご入金ください。その際、かならず名前、住所、電話番号を明記のうえ、通信欄に「冨安由真展記録集」とご記入ください(ご記入できない場合は、丸木美術館のお問い合わせフォームにてお知らせください)。
郵便振替口座 00150-3-84303 公益財団法人原爆の図丸木美術館
戦争の悲惨さ手と影で 被爆3世冨安さん企画展 東松山・原爆の図丸木美術館
—2023年7月9日 読売新聞 朝刊埼玉版
被爆体験、3世がアートで語り継ぐ 東松山・原爆の図丸木美術館
—2023年7月20日 朝日新聞 朝刊埼玉版
冨安由真 影にのぞむ
—2023年7月23日 アートテラー・とに~の【ここにしかない美術】
広島原爆に向き合った表現に震える。丸木美術館が冨安由真《影にのぞむ》を展示
—2023年8月6日 ウェブ版美術手帖 望月花妃
近づく被爆者なき時代、継承模索 「手の型」アート展やネットで発信
—2023年8月13日 朝日新聞 田井中雅人
作家のB面Vol.15 冨安由真【前編】現代アーティストが世界各地で蒐集して築いた“驚異の部屋”へ
作家のB面Vol.15 冨安由真【後編】正しさでは定義できない、曖昧な感情を求めて
―2023年8月18日 ARToVILLA
冨安由真がつくる幻のような影〈原爆の図 丸木美術館〉
―2023年8月24日 Casa BRUTUS 青野尚子の今週末見るべきアート
手で伝える原爆の惨禍 被爆3世が向き合った「宿題」
—2023年9月15日 日本経済新聞
冨安由真 影にのぞむ
—2023年9月18日 芸術広場
そこにある気配、時間や次元の層──原爆の記憶を語り継ぐ表現者【アーティストは語る Vol. 4 冨安由真】
—2023年9月19日 ART news JAPAN